第215章

「松本敬」

 物陰から松本敬をつけていた東雲麻乃は、勝ち誇ったように彼の前に姿を現した。

「聞こえたでしょ? あの女、結婚して子供までいるくせに、あなたに色目を使うなんて。あんなふしだらな女、本性がわかったでしょ?」

 松本敬は、まるで馬鹿を見るような冷ややかな視線を彼女に向け、無言のままきびすを返した。

 東雲麻乃は怒りで全身を震わせた。あの水原蛍、一体どんな手を使って彼をたぶらかしたのよ。子供がいる分際で、ここまで彼にかばわせるなんて。

 どうして? 見た目だって泥棒猫そのものじゃない。いい女なわけがない。

 私だって悪くないはずよ。なんで彼は私を見てくれないの?

 水原蛍...

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