第231章

「この件、痕跡は残ってないんでしょうね?」

薄暗い部屋の中、ふたつの影が向かい合って腰掛けていた。

「ご安心ください。もう部下に後始末をさせてあります。あなたに疑いが向くことはありません」

「それならいいわ。東雲麻乃のことは、あなたの判断に任せる。いざとなったら――」

女はすっと喉元を横に切る仕草をした。

男が去っていくのを見送ると、女の艶やかな顔に、ふっと冷えた色が差す。

――今度ばかりは、誰にも彼女は救えない。

水原蛍が二日二晩、昏々と眠り続けているあいだ、高橋逸人はずっとベッド脇を離れずに付き添っていた。

水原蛍が訓練所で毒蛇に咬まれて意識不明だと知ると、高橋元は慌てて...

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