第235章

暗がりに身を潜めていた松本敬は、壁にもたれかかりながら、思わず目を見開いていた。

東雲麻乃の死に、ただ呆然としたまま、無意識にここまで歩いてきてしまった。そこで、ふたりの会話を聞いてしまったのだ。

――天女さんが自分を受け入れなかったのは、もうとっくに高橋様のものだったから。しかも、本当に子どもまでいるなんて。

やっぱり、自分は出番の順番で負けていた。

水原蛍が荷物をまとめて訓練所を出ると、高橋逸人の車はすでにビルの下で待っていた。

見送りに来た村田瑠美が、蛍の手をぎゅっと握る。

「お義姉さん、今度休みになったら、あたし、遊びに行ってもいい?」

水原蛍はふっと笑った。

「もち...

ログインして続きを読む