第247章

 呆然としたようなその表情を見つめながら、水原蛍は思う。

 この人はきっと、この先、これまでの人生を振り返るのだろう。

 そして母に向けてきた、あの数え切れないほどの憎悪が――実は全部、虚しいものだったのだと気付くのだ。

 母は、愛していたのだ。

 自分たちを。

 ただ――。

 姫宮広野が笑った。自嘲めいた、乾いた笑み。

 長年、憎しみとして支えにしてきた信念が、実は根元から偽物だったと知らされた男の顔だった。

 姫宮広野の指先が、便箋の縁をぎゅっとつまみ、紙をくしゃりと歪める。喉仏が何度も上下しながらも、顔の筋肉は鉄板のように張り詰めている。

 十五歳で家の鉱山事故を背負...

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