第267章

好奇心にかられて振り返ると、男がひどく震えながら立っていた。肌は青ざめ、髪は伸び放題で脂ぎり、まともな服も着ていない。どう見てもホームレスだった。

その男が、店主の前までふらふらと歩み寄り、一枚の紙幣を取り出して差し出す。

金を見た店主はきょとんと目を丸くし、次の瞬間にはまた悪態をつきながら何かまくし立てたが、追い払おうとはしなかった。

男はそれきり、水原美香のほうへと一直線に向かってくる。突然のことに彼女はうろたえ、身動きもとれない。その目の前で、男はさっき彼女がゴミ箱に投げ捨てたばかりの財布を差し出した。

水原美香は呆然としながらも受け取り、中身を確かめる。男が店主に渡した分を除...

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