第310章

「ねえ、蛍。子どもたちももうすぐ学校だろ。俺たちだってもう結婚したんだし、そろそろ子どもたちの苗字、俺のほうに変えてもいいんじゃないか」

 水原蛍は黙り込んだ。その話なら、とっくに頭の中で何度も考えたことがある。けれど、どうしても口に出せずにいた。惜しいだけじゃない。どこか、怖くてたまらないのだ。

 生まれてからずっと、自分のほうの苗字で、自分と一緒にやってきた子たち。名前を変えるなんて、まるでその絆を奪われるみたいで、本能的に拒否感が湧いてしまう。

 とはいえ、高橋逸人の言うとおり、子どもは二人の子どもだ。苗字を変えないままでいろと言うのも、彼の気持ちを思うと、酷な話なのかもしれない...

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