第312章

 これは双方にとって、初めての正式な顔合わせだった。東雲奥さんはとうに録画機材を用意してあり、あとは相手の証拠を押さえるだけ、という段取りだった。

 男は腰を下ろすなり、本題に入った。

「で、いくら欲しい?」

 東雲さんが百万円と言いかけたところで、東雲奥さんが言葉をかぶせる。

「私たちだって、別に強欲ってわけじゃありませんから、そんなに取りませんよ。一括で、四千万」

 東雲さんは思わず目をむいた。倍額だぞ、と。

 男は鼻で笑った。

「いいだろう。金は問題じゃない。四千万どころか、さらに一千万上乗せして、五千万払ってやる。ただし、ひとつだけ手伝ってもらう。きちんとやってくれれば...

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