第321章

 水原蛍は片眉を上げた。動きが早い。呼んでから、まだ二分も経っていないはずだが――

「入って」

 ドアが開き、瀬戸志尚が姿を見せた。

 水原蛍は一瞬きょとんとする。ここに来てまだ日が浅く、社員の顔と名前が完全には一致していない。

「あなたは……」

「改めてご挨拶を。瀬戸志尚と申します、水原社長。名で呼んでいただければ」

「ああ」水原蛍は合点がいったように頷く。「営業本部長、だったわね?」

 瀬戸志尚はにこりと笑い、水原蛍はすぐに椅子をすすめる。

「それで、私に用ってなに?」

 瀬戸志尚は、少し口ごもった。

「水原社長、最近のアプリ開発の件でしてね。あれが気になって、ろくに...

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