第326章

 水原陽一は何も言わず、宇一の手を引いてタクシーに乗り込んだ。

「これから裁きを受けに行くんだ。おじさん、警察署までお願いできますか」

 警察署。車を降りて中へ入る。

 本来の目的は、昨日ここに駆け込んできたあの社長の住所を聞き出し、いくつか確認したいことを尋ねるつもりだった。ところが、二人が玄関をくぐった途端、その社長がすでに警察官と口論になっているのが見えた。

 その光景を目にして、陽一は内心で肩をすくめる。これでいちいち探し回る手間は省けた。しばらく様子をうかがいながら、外で老爺が出てくるのを静かに待つことにする。

 およそ三十分後。老人は顔を真っ赤にして、怒りをぶつけるよう...

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