第67章

その頃。

水原美香は自分が苦労して作った菓子を見つめ、甘い微笑みを浮かべた。これらは彼女がようやく覚えたものだった。

作り終えると真っ先に高橋逸人に味見してもらおうと持参したのだ。

もし彼が気に入ってくれたら、もっと作ってあげよう。

RME株式会社のビルを見上げ、彼女は全身が爽やかな気分になった。

「水原蛍というあの女がいないと、随分と気分がいいわ」

オフィスビルに入ったばかりの時、観葉植物の傍で二人の女性職員が雑談しているのが聞こえた。彼女は最初、二人を叱りつけてやろうと思った。勤務時間中にきちんと仕事をせず、サボっているなんて。

しかし近づいて二人の会話を聞くと、彼女は呆然...

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