チャプター 86

ダリウス

エレベーターを降りた途端、目の前の光景に一瞬ぎょっとした。ザックがセリーナを抱きかかえ、ケンジーがただそこに立っていたのだ。彼女がルディを後ろに従えて去っていくのを見送りながら、驚きと同時に、ある種の感嘆を禁じ得なかった。

俺はオフィスに入って腰を下ろした。数秒後、グレイソンが入ってきて俺の向かいに座った。「それで、ダリウス、何か分かったのか?」と奴は訊いてきた。

「ああ、ルディと俺で午前中ずっと調べていたんだが、手がかりも糸口も何一つなかった。彼女から電話があるまではな。それで家に帰ってみると、彼女のインターンの一人がうちのあのふざけたキッチンにいやがった」

「それで?」

「そ...

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