第261話ひよこが傷跡を掘る

アメリー視点

彼が「ベイビー」とどもりながら口にしたのを聞いたとき、夢を見ているのだと思った。けれど、本当に彼の声だったのだ。私は気が狂ったみたいにベッドから跳ね起き、ナースコールを押した。

「ネイサン!」私は叫びながら、ベッドの反対側へと回り込んだ。「今、ベイビーって言ったの?」

そのとき見えた。美しい灰色の瞳が、ぱちぱちと瞬きをして開くのが。私は生まれて初めてと言っていいほど、その目が開いたことを嬉しく思った。次に何を口にしたのかも覚えていない。とにかく取りとめもなく喋っていた気がする。私はそっと身を屈めて彼の唇にキスをした。すると、彼もキスを返してくれた。嬉しくてたまらなかった。

...

ログインして続きを読む