チャプター 3 — 概要

ナサニエル視点

――もう黙れ。心の中で吐き捨てた。どうして連中は会社の「可能性」だのなんだの、いつまでも同じことを繰り返す必要がある? 知ったことか。俺は会社を買って、切り刻んで売り払うためにここにいる。明日になれば、ブレイク・インダストリーズは消える。みんな、俺がそういう人間だってわかってないのか? あと一回「可能性」なんて言葉を聞かされたら……。

「マイケルズ先生」秘書の声がした。「ご同意いただけますか?」相手はゆっくりと、目立たぬようにうなずく。

「ええ」俺は答えた。「お取引できて光栄でした、皆さん」握手が交わされる。やっと終わった。ありがたい。

秘書のサミュエルが俺の後に続いて部屋を出た。明日の予定が矢継ぎ早に告げられる。

「本日の午後はすべて空けてあります。マイケルズ氏が病院にいらしてほしいと」

俺はため息をついた。「三十分で行くと伝えてくれ」

祖父の要請を無視することなどできない。高齢になっても、周囲の誰に対しても敬意を要求する人だった。金融界はもちろん、その外側まで、彼がどれほどの怪物か皆が知っている。

今度は何の用だろう。リムジンの後部座席に滑り込みながら、俺はそう思った。たぶんまた、結婚していないことを小言のように責めるつもりだろう。冗談じゃない。俺はまだ二十五だ。何をそんなに急ぐ? 独身で、楽しくやってる。とびきり楽しく。真剣に付き合った相手は一人だけだが、当時の俺は若すぎたし、縛られる覚悟なんてなかった。世の中には味わうべき種類が山ほどあるのに、なぜ一人の女に自分を繋ぎ止める? しかも俺は食欲旺盛だ――そう、桁外れに。昨夜ホテルに残してきた、あの黒髪の女を思い出して俺は口元をゆがめた。今まで抱いた女の中でも、あれほど張りのある丸い胸はなかった。ルールを破ってもいいかもしれない――そう思わせるタイプだった……ほとんど、だが。俺は同じ女と二度寝ない。相手が情を移したり、面倒に絡みついたりする手間が省ける。生活をややこしくしたくない。

運転手のマーカスが「病院に着きました」と告げて、俺の思考を引き戻した。

「一時間もかからないはずだ、マーカス。長引きそうなら連絡する」

「承知しました。では一時間後に」

俺は病院ロビーのカフェへ向かい、祖父のために濃いめの大きなコーヒーを買おうとして、頭の中で聞こえた声にくすりとした。――「ナサニエル、私のコーヒーなしでこの部屋に入るんじゃないぞ」。うるさくて我儘な老人だが、俺は誰よりも祖父を愛している。

列に並びながらカフェを見回し、人々がそれぞれの一日を回している様子を眺めた。その瞬間、心臓が止まった。

――誰だ、あれは?

隅の小さなテーブルに、ひっそりと身を縮めている女がいた。いや、女じゃない。女神だ。背中を丸めて泣いているのに、それでも息を呑むほど美しい。俺の下腹が一気に反応する。目を奪われ、呼吸が浅くなった。長く艶やかな濃い栗色の巻き髪をポニーテールにまとめている。撫でるのを待っているみたいな、乳白色の肌。フード付きの上着にレギンスという格好なのに、その下に隠れているものがただの体じゃないとわかる。天使みたいな顔は涙で濡れていて、大きな茶色の瞳でふと見上げたとき、胸の奥がきしんだ。どうしてあんなに悲しそうなんだ? 気づけば歩み寄りたくなっていた――そのとき。

「次の方ー!」バリスタが叫んだ。

「すみません」俺は一歩前へ出た。

俺を見たバリスタが、目に見えてとろけた。いつものことだ。俺が見た目に恵まれているのは自覚している。女はいつだって向こうから寄ってくる。もはや、口説かれなかったら驚くレベルだ。

「大きいサイズの濃いコーヒーを。ブラックで」

「かしこまりました」彼女はまつげをひらひらさせながら言う。「ほかには何か……何でも……よろしいですか?」胸を突き出し、唇を噛む。

「いや、それだけで。ありがとう」

彼女の口元が不満げに尖り、慌ただしくコーヒーを注ぎに行った。

待っている間、もう一度あの悲しい女神を見ようと振り返る――だが視界に入ったのは、空っぽのテーブルだけだった。

くそ! くそ、くそ……!

彼女は誰で、どこへ行った?

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