第5章
大輝の温かい抱擁は、私の痛みをすべて忘れさせてくれそうだった。だけど、理性がこのままではいけないと告げていた。
「ありがとう、大輝くん」私はそっと彼を押し返し、涙を拭った。「もう戻らなきゃ」
「麗子……」大輝が名残惜しそうに呼びかける。「何か困ったことがあったら、いつでも電話してくれ」
私は頷いて背を向けた。数歩歩いてから振り返ると、大輝くんはまだその場に立って私を見送っていた。その心配そうな眼差しが、私の心を温める。
誰かに心から心配されるっていうのは、本当に素敵なことなのかもしれない。
でも、恋とか感情で判断を鈍らせるわけにはいかない。私には守らなきゃいけない年収二...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
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