第8章
「もう手遅れだと言ったら、どうする?」
「そうか?」彼は一歩近づいた。「今日、君は何か感じただろ。私にはわかる。車の中で話していた時、昔のことを思い出して……君も感じていたはずだ」
ええ。何かは感じた。懐かしさ、だったかもしれない。あり得たかもしれない未来への後悔。でも、何かを感じたからって、それが何になるっていうの。特定の歌を聴いたり、映画を観たり、食べ物の匂いをかいだりした時だって、私は何かを感じる。だからといって、過去に戻りたいわけじゃない。
「何かを感じたからって、歴史を繰り返したいわけじゃないのよ、良介」
「今度こそ、違うものになれるとしたら?」
「どうやって?どうやっ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
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