第5章

午前6時47分、電話が鳴った。

「竹内さん?」看護師の声は震えていた。「すぐ来てください。お母様が……行方不明なんです」

私は飛び起き、貴志の腕が体から滑り落ちた。「行方不明って、どういうこと?」

「ベッドが空なんです。病院中を探しましたが、どこにも。防犯カメラにも何も映っていません」

二十分後、私たちは不気味なほどがらんとした母の病室に立っていた。計器類は沈黙し、母の私物も消えていた。

「夜勤の者が午前三時に様子を見たときは、」と、看護師長が説明した。「何も異常はありませんでした。朝のシフトの者が来たときには、もう部屋は空だったそうです」

貴志は窓辺へ歩み寄った。「病院...

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