第6章

あのテレビ生放送での大失態から、きっかり十二時間後に電話はかかってきた。

「芦田さん」貴志のスマホのスピーカーから、穏やかで教養のある声が聞こえてきた。「そろそろ、直接お会いすべき時でしょう」

貴志は顎を食いしばった。「黒石昌弘」

「千年紀クラブ、個室の七番だ。一時間後に」少し間があった。「一人で来い、貴志。君の父親の遺産について、話すべきことがたくさんある」

貴志は電話を見つめていた。その指の関節は白くなっていた。彼が怒っているのは今までにも見たことがあったけれど、これは違った。裏切りと混じり合った、純粋で凝縮された怒り。

「知り合いなのね」私は静かに言った。

「黒石昌弘...

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