第110話やりたいことをやれ

レイラ視点

三十分ほどして、車はスターリング邸の門前に滑り込んだ。窓越しに、見慣れた屋敷を見つめる。

この場所に、いい思い出はほとんどない。結婚していた頃のここは、金色に飾られた檻だった。いつも静かで、いつも空っぽで、私はただひたすらセロンが仕事から戻るのを待ち続けた。どの部屋も高価な調度品で埋め尽くされているのに、ぬくもりだけが欠けていた。

サンフランシスコに戻ってから、屋敷にここまで近づいたのは初めてだった。思いがけない反発が胸の奥から湧き上がり、私は中へ入るつもりなどなかった。ノアを送り届けたら、すぐに帰る――そう決めていた。

「ママ、ぼくが手、つなぐ!」ノアの小さな声が、思考の...

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