第271話和解が早すぎる

セロン視点

「ありがとうございます」レイラはヴィクトリアに、礼儀正しい笑みを返した。だがその微笑は、目元までは届いていない。二人のあいだに横たわる緊張は手に取るようで、長年の痛みが、たったひとつの謝罪でそう簡単に消えるはずもなかった。

俺は彼女の手をそっと握り、居心地の悪さを感じ取る。「そろそろ、ほかの招待客のところへ行こう」滑らかに言い、両親に恭しく一礼してから、レイラを連れてその場を離れた。

人混みを抜けながら、低い声で尋ねる。「大丈夫か?」

「平気」彼女はそう請け合い、母から距離ができるにつれて目に見えて力が抜けた。「今夜は楽しもう。ね」

婚約の“公の場”としての段取りは終わっ...

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