第54章マスクオフ

レイラ視点

私はセロンの太腿に、特殊な神経伝達物質モジュレーターを注入することだけに意識を集中させた。手は揺るがず、動きは正確だ。注射部位には絶対的な精密さが求められる――わずか一ミリでもずれれば、効力は三割近く落ちかねない。

頭の中は筋組織の反応でいっぱいだった。薬剤が神経再生を促している兆候が出るかどうか、その決定的なサインを見逃さぬよう目を凝らす。この化合物はランダル製薬が開発中の実験的治療薬の中でも、最も有望なもののひとつだ。研究室の結果が示したとおり、セロンの衰えた脚の筋肉にも同じ効果が出るのか――私はそれを確かめたくて、落ち着かない気持ちを抱えていた。

張りつめた沈黙のまま、...

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