第60話どうぞよろしくお願いします

レイラ視点

ジェームズの常軌を逸した競り値が出た途端、競売場は抑えたざわめきに包まれた。人々が次々とセロンのほうへ顔を向け、憶測に見開かれた目と、ひそひそと動く唇が静かな会話を形づくっていくのを、私は眺めていた。

「ミスター・スターリング、またしても落札です」競売人が小槌を華やかに振り下ろしながら告げる。「『永遠の航海』ブルーダイヤのセットは、スターリング・グループを代表する紳士に一千万ドルで落札――!」

近くのテーブルから、波紋のように広がる囁きの断片が耳に入った。

「またスターリング……宝飾品なんて、どうして買うの? 誰のため?」エメラルド色のイブニングドレスをまとった女が言う。

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