第208章 弱点

噂によれば、かつて佐藤梓紗は田中海鳥との結婚を認めてもらうため、実家と数年にわたる確執を繰り広げたという。最後には家族のほうが根負けし、渋々首を縦に振ったのだとか。

愛ゆえの結婚だと信じて疑わなかった佐藤梓紗は、それからというもの自らの才能を封印することを選んだ。絵筆を握ることはほとんどなくなり、ただひたすらに田中海鳥の出世を支える内助の功に徹してきたのだ。

佐藤梓紗は相当な手腕の持ち主であり、その背後には佐藤家という強大な後ろ盾がある。もし彼女にあの母子の存在が知れ渡れば、田中海鳥が長年苦心して築き上げてきた全ては、瞬く間に灰燼に帰すだろう。

案の定、林田ククの言葉を聞いた途端、田中...

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