第212章 戯れ

情事のさなか、肌を甘く噛むのは情趣というものだが、血が滲むほど噛みつくとなれば、そこには多少なりとも個人的な怨恨が混じっていると言わざるを得ない。

林田は頬を摘ままれ、唇を尖らせて彼を睨みつけた。まだ始まってもいないのに赤く色づいた自身の唇を指差して抗議する。

「よくそんなこと言えるわね。見てよこれ、私にキスしてどうなったか」

彼女は忌々しげに藤原の胸を小突く。その声には、いくぶん甘えるような響きが混じっていた。

「痛いんだけど……」

熱気のせいだろうか、林田の目尻はほんのりと赤らんでいる。潤んだ瞳で見上げられると、まるで虐められた可哀想な仔猫のようで、庇護欲を激しく掻き立てられた...

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