第229章 彼女の男を奪った

手をポケットに入れようとした、その前に。手首をがしっと掴まれた。

林田ククの笑みがぴたりと固まる。無情な視線のまま、藤原深が冷たく口の端を歪めた。

「やるじゃないか。こそこそやる腕前、また上がったな」

そのひと言で、林田ククの笑顔は一瞬で消える。

「こそこそって何よ。自分のスマホを取り返して何が悪いの。早く返しなさいよ、スマホ!」

藤原深は彼女の手を振り払うと、横の本棚から『全球通史』を一冊抜き取り、そのまま林田ククの胸元に放り込んだ。

とっさに抱え込んで、なんとか落とさずに済んだ瞬間、彼の声が落ちてくる。

「本でも読んどけ。ああいう中身のないもんばっか見てないでな。三時にはA...

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