第267章 彼女を目の敵

林田ククは午後の撮影を終えると、タクシーで撮影現場に戻り、出番が終わるやいなや早々に帰宅した。

時間はまだ早い。彼女はマンションの下にあるスーパーで食材を買い込み、自炊することにした。料理の腕は人並みだが、食べられないほどではない。

ただ、何かをして時間を潰したかったのだ。今の林田ククにとって、静寂は毒だ。一人で静かに過ごしていると、どうしても余計なことを考えてしまう。

料理が出来上がったのは、夜の九時を回った頃だった。

ちょうど仕事を終えた朝日明美が帰ってきた。ドアを開けるなり漂ういい匂いに、彼女は飢えた狼のように飛びついてくる。感動のあまり林田ククの頬を包み込み、勢いよくキスをし...

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