第287章 買えない

仲介業者の担当者はスマートフォンを握りしめ、林田ククに向かって感謝の意を込めて深々と頭を下げた。

「本当にありがとうございます! 何か進展がありましたら、すぐにでもご連絡いたしますので!」

そう言い残すと、担当者は慌ただしく車に乗り込み、足早に去っていった。

林田ククは車が遠ざかっていくのを静かに見送ってから、ようやく自分の足で歩き出した。

この近くに一軒の洋食レストランがある。そこの鮪のパスタは絶品で、朝日明美も大好物だった。

そこで食事を済ませ、ついでに朝日明美の分もテイクアウトして帰ろうと、林田ククは考えていた。

レストランに入り、空いている席を見つけて腰を下ろす。注文を済...

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