第293章 彼女の代わりに

その時、ドアをノックする音が響き、ウェイターが二本のボトルを手に個室へ入ってきた。彼は藤原深に向かって一礼する。

「藤原社長、ご注文のお酒でございます」

藤原深は立ち上がってボトルを受け取ると、ウェイターに目配せして退出させた。そのまま酒を円卓のターンテーブルに置き、川崎務に視線を向ける。

「川崎のおじさん、今日は急だったもので、手土産を用意する暇がありませんでした。ちょうどここに良い酒を何本かキープしていたので、宴の席の足しにでもなればと」

川崎務は無類の酒好きであり、並々ならぬこだわりを持っている。そのパッケージを見ただけで、それが極上の銘酒であり、しかも彼が最も愛飲する白酒であ...

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