第363章 怖がるな

主寝室に足を踏み入れた途端、林田ククは立ち尽くした。部屋は彼女が出て行った時のままだった。ウォークインクローゼットの彼女のスペースには依然として服がぎっしりと掛かっており、化粧台の上のコスメの配置すら、何一つ変わっていなかった。

室内をぐるりと見渡し、やがてその視線はベッドの枕元に飾られたままのウェディングフォトで止まった。

しばらくそれを見つめてから、写真を外そうと歩み寄る。だが、額縁の端に指が触れた瞬間、ぐっと手首を掴まれた。

「何をしてる」

藤原深は焦ったような声を上げた。

林田ククは彼を冷ややかに見上げた。

「わたしたち、もう離婚したのよ。こんなもの飾っておくのは不適切で...

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