第378章 ヒモ

すべては朝日明美の作る料理があまりにも美味しすぎたせいだ。あの晩、彼女の手料理を味わって以来、神崎遠はずっとその味が忘れられずにいた。

だが、藤原深は最近会社が忙しく、こちらに来る余裕がない。そのため、彼には堂々と食事にありつく口実がなかった。

数日前の仕事帰り、エレベーターから大荷物を抱えて降りてくる明美に偶然出くわした。尋ねてみると、どうやら田中大介のために食事を作ろうとしているらしい。

そこで遠は機転を利かせ、田中大介に弁当を届ける運転手役を自ら買って出たのだ。

実際のところ、明美自身も田中大介との距離がそれほど縮まっていないことを自覚していた。食材を買い込んだものの、もし受け...

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