第384章 機会

藤原深は生きてきた二十数年間、自分の前でこんな口の利き方をする者など一人もいなかった。

喉仏が上下に動く。本来なら林田ククを皮肉ってやろうと思ったのだが、彼女の疲労の色と意地っ張りな表情を前にしては、言葉が出なかった。

林田ククは彼の手から古い服を受け取ると、軽く頷いた。

「藤原社長はお仕事に戻ってください。お邪魔しました」

そう言って彼を通り越し、エレベーターの方へと歩き出す。だが、背後から足音がついてきた。

藤原深がぴったりと後ろについてくるのだ。

林田ククの顔に怒りが浮かぶ。

「藤原深、人間の言葉が理解できないの?」

藤原深は彼女をじっと見つめ、手を伸ばしてエレベーター...

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