第395章 薬を塗る

林田ククは胸がひやりとした。

藤原深は昔から有言実行の男だ。出ていかなければ、本当に遠慮なくズカズカ入ってくる。

それじゃ、必死に二人の関係を隠してきた努力が水の泡じゃない。

「……もう、ムカつく」

ぶつぶつ悪態をつきながら着替えを済ませ、ぱたぱたとスリッパで外へ出る。角を曲がるとき、誰かが電話している気配がして、思わず足を止めた。けれど、耳を澄ましても何も聞こえない。

気のせいか。小さく呟き、藤原深が本気で暴走する前にと急いだ。

その背中が闇へ溶けていくのを見送ってから、杉浦世奈が暗がりから姿を現す。林田ククの後ろ姿を目で追い、作り声で受話器の向こうに適当に相槌を打って電話を切...

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