第416章 知り合い

林田ククが胸の奥の「懐かしさ」の正体を掴みかねていると、菅野監督がすでにこちらへ歩み寄ってきた。満足げな笑みを浮かべ、例の役者の背をぽんと叩きながら紹介する。

「こちら、君の相手役の林田ククだ」

それから振り返って、林田ククにもにこりと笑いかけた。

「で、こっちが榎本律人」

礼儀として、林田ククは自分から手を差し出し、口元だけ柔らかく上げて挨拶する。

「はじめまして。よろしくお願いします」

榎本律人は見下ろすように彼女を見た。水面みたいに揺れる瞳からは、いっさい感情が読めない。身体も微動だにしない。

差し出した手が宙に取り残される。林田ククは気まずさをごまかすように笑って、拳を...

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