第464章 気まずい

今日のクランクイン式で目立つために、水原心柔はずいぶん前から立て看板を特注していた。写真を選び、業者を選び――それこそ手間ひまをかけて。

ようやく迎えた当日だというのに、開始して数分もしないうちに、丹精した準備は見るも無残に崩れ去った。

水原心柔が顔を上げる。目の前には、ほぼ大人二人分の背丈がある巨大なぬいぐるみ。すでに何人もがすっかり魅了されていて、触らなくても、手触りが相当いいのは想像がつく。

こんなサイズのぬいぐるみ、ステージ脇に置くだけで視線を総取りだ。

水原心柔は、林田ククは本当に争わないタイプだと思っていた。けれど――全部、演技だったのか。

杉浦世奈が人混みをかき分けて...

ログインして続きを読む