第529章 お揃い

林田ククは、正直こんなにたくさん服を試す気分じゃなかった。ぱらぱらと二着だけ眺めてみたものの――藤原深の言葉が頭の隅に残っているせいか、どれも妙に味気なく思えてしまう。

彼女はスマホを取り出し、店長に電話をかけた。

「もしもし。MSブランドの店長さんでいらっしゃいますか」

相手はまずまず丁寧だった。

「はい。失礼ですが、どちらさまでしょう。ご用件は?」

林田ククは淡々と告げる。

「夫とこちらの店舗で買い物をしていたのですが、少しトラブルがありまして」

一拍、向こうが静かになった。次いで、かさかさと慌ただしい物音がしてから、少し低くなった声が返ってくる。

「……承りました。詳し...

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