第539章 背景

石田弘之は固まった。荒唐というか、にわかには信じがたいものを見る目で小鳥遊初を見つめる。

「最近、案件詰め込みすぎじゃないか? ストレスでおかしくなってるんじゃ……。休み取れよ。俺がどっか連れてって息抜きさせてやる」

ここ数日、小鳥遊初が連日早朝から深夜まで動き回っていたのは事実だ。食事すらまともに取れない。重圧のせいで幻でも見はじめたのか——そんなふうに思うのも無理はない。

小鳥遊初は容赦なく石田弘之の脚を蹴った。

「仕事が多いだけ。認知症じゃない。人の見分けくらいできる」

石田弘之は脚を押さえ、声にならない悲鳴をあげる。が、視線の端は桜のほうへ。距離があっても、体つきや所作はた...

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