第554章 中絶

看護師はその場で固まったが、すぐに慌てて情報を照合しはじめた。氏名から身分証まで一つひとつ確認し、誤りがないと分かると、林田山の顔色をうかがいながら言う。

「……ご相談はされていないんですか? 中絶は、患者さまご本人のご希望でお手続きいただいたものです」

揉められたくないのか、さらに付け加える。

「ご不安でしたら、防犯カメラの映像も確認できますので」

林田山は眉をひそめ、用紙を覗き込んだ。そこには確かに夏川薫の筆跡がある。途端に顔色が沈む。

――子どもは産め。そう言ったはずだ。

夏川薫も、何度も「分かった」と口にしていた。今朝だって、友だちと母子用品を見に行くと言っていた。林田陽...

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