第556章 偶然

林田ククは、彼が小野美島をかばうように立ったのを見て、鼻で笑った。まだ体裁ってものは気にするんだ。

表向きは気づかないふりをして、わざと話を逸らす。

「そっちの後ろの人、誰? 見ない顔だけど」

林田山は答えたくなかった。だが藤原深の視線までが、林田ククの言葉につられて背後へ向く。無視もできず、渋々、腹を括った。

「……俺の秘書だ」

「へえ。秘書を連れて産婦人科?」

からかいと意地の悪さが、これでもかと詰まった問い。林田ククは面白がるように、林田山が言葉に詰まる顔を眺めた。夏川薫の前で、どう言い訳するつもりなのか――。

ところが先に口を開いたのは、夏川薫だった。

「違うわ。彼は...

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