第557章 秘事

藤原深は首を横に振った。「なんだかんだで佐藤家は名の通った大きな家だ。体裁ってものは整えないとな」

何かを思い出したのか、薄い悔いが表情をかすめる。「時言には昔、兄貴がいたんだ。出来がよくて、みんな『あいつがいれば佐藤家はもっと上に行く』って期待してた。けど八歳の誕生日に、ちょっとした事故で水に落ちて……溺れて死んだ」

八歳の誕生日は、ちょうど佐藤梓紗が帰国した時期でもあった。本来なら慶事が重なるはずだったのに、佐藤梓紗と関係が切れない恋人が押しかけてきて、家の中は収拾がつかない騒ぎになった。

皆が止めに入り、仲裁に回り、兄についていた保姆まで引っ張り出された。その隙に兄は水辺で足を滑...

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