第569章 ちょうどいいタイミング

榎本律人は、注文する場面を頭の中で何度もリハーサルしてきた。実際にやってみても、驚くほどすんなり終わる。メニューを藤原深に先に取られた――そこだけが想定外で、あとはほぼ筋書きどおりだった。

「わあ、ぜんぶわたしの好きなやつ。もしかして、好み似てるのかな」

林田ククが藤原深の手元に寄り、メニューを覗き込んで目を丸くする。

榎本律人はうなずいた。そうだろ。どれだけ下調べしたと思ってる。

一方の藤原深は、別のことを考えていた。姉弟なら、似てないほうが不自然だろ。

注文が済むと、林田ククは榎本律人に向き直り、弟を気づかう眼差しを向けた。

「ねえ、ケガはどう? もう平気?」

さっきマネー...

ログインして続きを読む