第573章 電話

藤原深の隣にいた林田ククにまで聞こえたらしく、彼女はむっとして尋ねた。

「誰?」

藤原深はたいして気にした様子もなく言う。

「お前の社長」

「え?!」林田ククはその一言で一気に目が覚めた。

川崎司光は契約中の恋愛を明確に禁止していたわけではない。だが何度か話すうちに、彼女の私生活に妙なもつれが生まれるのを、あまり快く思っていないことは伝わってきていた。

やっと巡り合えたいい社長だ。根も葉もないことで仕事を失うなんて、絶対に嫌だった。

電話口の川崎司光は、声色がどす黒い。

「なんであいつがお前の家にいる」

藤原深は言い訳の材料が山ほどある、とでも言うようにさらりと返した。

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