第597章 そんなことはない

原田博也は軽くひと言だけ残して立ち去った。あとに残されたのは、黒い顔をした藤原深と向き合わされる林田ククひとり。

「約束を果たす、だと?」

藤原深は林田ククを睨み据え、説明を待つ。

林田ククは気まずそうに笑った。

「約束なんて、ないよ」

本当にない。原田博也との過去はごく短く、時間とともに輪郭も薄れていった。けれど、本当に大事なことだけは忘れない。

まして、自分がいちばん重く見ている“約束”ならなおさらだ。あれは原田博也が勝手にでたらめを言って、仲を引っかき回してるだけ。

――藤原深の口だって、さっきから相当きつかったけど。

林田ククには「隠していた前科」がある。藤原深は簡単...

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