第619章 会場

藤原深は唇をきゅっと結び、それ以上は口を開かなかった。だが目の奥には、ほんの少しだけ得意げな色が浮かんでいる。バックミラー越しに林田ククと視線を合わせ、彼女が小さく眉をひそめて「やり過ぎないで」と目で告げると、深は眉を上げて笑みで返した。

「兄さん……」

「黙れ。もう一言でも喋ったら、車から放り出すぞ」川崎司光が鋭く睨む。

車内はようやく静かになった。

けれど川崎司光の機嫌はまだ直らない。信号待ちの合間に林田ククの服装をちらりと見て、眉を寄せた。

「なんでそんな地味な格好なんだ」

言い方がきつ過ぎたと気づいたのか、彼は無理やり口調を整える。

「……いや、何を着ても似合うけどな。...

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