第56章 いつも誰かが教訓を欠いている

佐藤桜は学長の言葉を聞いた途端、すっかり気分が悪くなった。

彼女は向こうに立っている中村司を見つめ、目には拒絶の色が満ちていた。

最終的に、中村司は淡々と答えた。「結構です」

佐藤桜はほっと息をついた。学長が中村司を第一列の真ん中に案内して座らせるのを見て、明らかに並々ならぬ身分の持ち主だと分かった。

あの忙しい中村司がなぜここに来ているのか、彼女には理解できなかった。

だが、すぐにその理由が判明した。

彼女がステージに立った時、奨学金の提供者として中村司が登壇し、受賞者に直接賞を授与したのだ。

佐藤桜はきちんとした装いで歩いてくる嫌な男を見つめていた。

中村司は賞状を手に持...

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