第10章

向こうで椎名水緒が興奮冷めやらぬ様子であることなど、こちらの二人は知る由もない。

鉄板焼きの香ばしい匂いが漂い、ジュージューという音と店主の掛け声が交じり合って、あたりは活気に満ちている。

千鳥凪紗は水を半分ほど飲み、喉の渇きは癒えたが、ふと甘いものが飲みたくなった。

彼女は視線を巡らせ、不意に近くのコンビニに目を留めると、藤野拓介に言った。

「あそこのコンビニで飲み物を買ってくるわ。あなたもいる?」

藤野拓介は鉄板から視線を外し、彼女の顔を見て穏やかな眼差しを向けた。

「ああ、俺にも頼む。君と同じやつでいい」

「分かったわ」

千鳥凪紗が店に向かって歩き出すと、彼女と入れ違い...

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