第111章

藤野実和は振り返りもせず病室を飛び出した。だが、廊下は閑散としており、千鳥凪紗と藤野拓介の影などどこにもない。

彼は苛立ち紛れに壁を拳で殴りつけた。下降していくエレベーターの数字を睨みつける瞳には、不甘と狂躁が渦巻いている。

病室では、千鳥愛梨が床に這いつくばったまま、未練もなく立ち去った背中を見つめ、心が死灰のように冷え切っていくのを感じた。

愛しても報われない苦痛、捨てられた屈辱。それらが彼女の胸中で発酵し、どす黒い憎悪へと変わっていく。

彼女はゆっくりと顔を上げ、怨毒に満ちた眼差しをドアの方角へ向けた。爪が掌に深く食い込む。

千鳥凪紗……全部あんたのせいよ!

あんたさえいな...

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