第118章

彼が何気なく口にしたその一言だけで、千鳥凪紗の心は満たされた。

柔らかな日差しが降り注ぐ中、男は仕事に没頭している。凪紗は少し離れた場所に座り、彼が用意してくれた菓子をつまみながら、時折顔を上げてその端正な横顔を盗み見る。

穏やかで、満ち足りた時間。

彼を見つめていると、心の奥に残っていたわずかなわだかまりや非現実感が、朝霧のように消え去っていく。

この人こそが、私の藤野拓介。これからの人生を共に歩む、かけがえのない拠り所。

千鳥凪紗は携帯を取り出し、柚木文乃にメッセージを送った。

【チャリティー晩餐会があるの。空いてる? 美味しいものでも食べに行きましょう】

この幸せを、...

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