第19章

「昔も節穴だったけど、今も変わらないようね」

 千鳥凪紗は冷ややかに言い放つと、携帯電話を取り出し、躊躇なく110番を押そうとした。

 その時、オフィスの入り口から嬌慢な女の声が響いた。

「あら、随分と賑やかじゃない? 千鳥凪紗、また会社で何か盗んだの?」

 その場にいた全員が声の方を向く。そこには、ハイヒールを鳴らし、スーツ姿の品の良い若い男の腕を組んだ千鳥愛梨が入ってくるところだった。

 人垣の中心にいる千鳥凪紗を見ると、彼女は隠そうともしない嘲笑を顔に浮かべた。

 千鳥凪紗は彼女の姿を認めるなり、不快げに眉をひそめる。対照的に梅原月は、まるで救世主が現れたかのように表情を一...

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