第203章

藤野拓介は表情を曇らせ、バックミラー越しに後部座席で忍び泣く松下司奈を冷ややかに一瞥すると、檜山元司に電話をかけた。

その声には微塵の温かみもなく、簡潔そのものだった。

「私だ」

「東区にあるセキュリティレベルが最も高い別荘を用意しろ。使用人は全員引き払わせ、信頼できる女性のボディガードを二人配置するんだ」

電話の向こうで檜山元司が絶句した気配が伝わる。主がなぜ突然そのような指示を出すのか理解できないのだろう。

藤野拓介は彼に質問の隙を与えなかった。「司奈が戻ってきた。お前が直接連れて行き、二十四時間体制で監視下に置け」

「……」

電話口は死のような静寂に包まれた。数秒後、檜山...

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