第209章

彼女は指先を伸ばし、彼の強張った腕をツンツンとつついた。口元に揶揄の色を帯びた浅い笑みを浮かべる。

「藤野さんもようやく脳みそが働き出したみたいね。色仕掛けに目が眩まなくて何よりだわ」

褒めているようで実は貶しているその「称賛」に、藤野拓介の硬い表情がいくらか和らぐ。

彼は悪戯なその手を捉えると、唇に押し当てて口づけを落とした。そして顔を向け、かつてないほど真剣な眼差しで彼女を見つめる。

「千鳥凪紗。俺の生涯は、君一人に捧げればそれでいい」

一言一句、宣誓するかのように厳かに告げた。

「他の女なんざ、誰であろうと道端の石ころと同じだ」

その瞳に宿る深情と熱量に、溺れてしまいそう...

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