第220章

恐怖に震える辰樹を抱きしめ、いくつもの物語を語って聞かせた。ようやくその小さな体から力が抜け、深い眠りに落ちたのを見届けてから、彼女は音を立てないよう慎重に彼をベッドへと横たえた。

目尻にまだ涙の跡が残る息子の寝顔を見つめ、千鳥凪紗の指先がその額の傷をそっとなぞる。瞳の奥底から、痛切なまでの愛おしさと恐怖の余韻が溢れ出しそうだった。

眠気など、欠片もない。

昼間に起きた出来事が、まるで永遠に繰り返されるホラー映画のように脳裏に焼き付いて離れないのだ。

窓辺に歩み寄り、ガラス戸を押し開ける。潮の香りを孕んだ夜風が、火照った頬を撫でていく。

夜の海は深く、波が飽くことなく岩礁を打ち据え...

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